徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

盲導犬サーブ号について

盲導犬はその一生を費やして、人間という全く別の種族を愛してくれる。
高度な判断能力を持ち、いざとなれば自分の命に代えても人間を護ろうとしてくれる、それはほとんど神に近い存在。
小学校のころに盲導犬サーブの話を読んでから、ぼくは彼らをそういうふうに感じるようになりました。
 
サーブはシェパードの盲導犬でした。
町で見かける盲導犬は普通、ラブラドールレトリバーゴールデンレトリバーがほとんどだと思います。
盲導犬は盲人の眼となる非常に重要で繊細な仕事をするため、例えばほかの犬や動物とすれ違ったり、変な音がしたりという異変があってもそれに気を取られない性質が必要になります。
そのため、レトリバー系のおっとりした犬種が盲導犬には向いているのですが、サーブは鋭敏な気性を持つシェパードでありながら盲導犬になった、とても珍しいケースです。
ちなみに、女の子です。
 
盲導犬は訓練を受けて様々な能力を身に着けていますが、その中でも特に重要で、優れた能力は「不服従」の行動です。
どんな状況でも与えられた命令に従う、これは普通に訓練された犬が行う行動です。
しかし盲導犬は、「与えられた命令に従うべきかどうか判断し、状況によっては命令に背く」という高度な行動とります。
たとえば、前に進めと命令されても、このまま進めばパートナーの盲人が段差で躓きそうだとか、障害物にぶつかりそうだとか予測された場合、これはまずいと判断して立ち止まる、などの行動をすることができます。
 
――1982年、1月。
うっすらと雪のある国道を、サーブはパートナーと歩いていました。
そのとき、雪でスリップした車がサーブとパートナーに突っ込んできたのです。
盲導犬の役割はパートナーの指示に従いつつも、パートナーが転んだり物にぶつかったりしてけがなどしないように誘導することです。
しかしこのとき、サーブはとっさの判断で不服従の行動をとりました。
身をよじってパートナーを歩道側に転倒させ、車の進行方向から逸らせました。
そしてその反動でサーブは突っ込んでくる車の前に飛び出す形になり、はねられました。
 
この事故でパートナーは軽傷を負っただけで済みましたが、サーブは左前脚を根元から切断する重傷を負いました。
それでもサーブはパートナーから離れたがらず、事故後しばらくの間は盲導犬として働きつづけました。
 
盲導犬は吠えません。
他の犬に吠えかけられても、目の前を小動物がうろついても、吠えることはありません。
しかしサーブは盲導犬になってから一度だけ、吠えたことがあります。
 
三本脚のまま盲導犬として働き続けたサーブでしたが、体にかかる負担は大きく、胃捻転に悩まされ、ついに引退することになりました。
引退式。
サーブのパートナーは、サーブと、もう一頭の新任の盲導犬と並んで記念撮影を行いました。
その時、サーブはたった一声だけ、大きく吠えました。
パートナーとの別れを悟ったからでした。
 
人間という全く違う種族を愛し、身を挺してまで護ろうとし、
自らの身体を欠損してなお人間に寄り添い続けてくれたサーブ号。
その愛情、自己犠牲の魂は人間の及びもつかぬ遥かなる高みにあるとしか思えず、
だからぼくは、盲導犬を尊敬しています。
 
だって、誰かを護ろうとして、てめえの腕をぶっちぎられて、その痛み、苦しみ、憎悪、怒り、悲しみ、絶望、恐怖、恐怖、恐怖、全部、その身体に残したまま、変わらぬ慈愛を持ち続けるって、そんなもん、想像もつかないから。
 
・・・
Ingressの記事でした。
盲導犬サーブ号の銅像名古屋市にあり、またそれにちなんだIngressのミッションがある事を少し前に知り、先週末に行ってきました。
ミッション自体は五分で終わるもの。
流石にそれだけで名古屋遠征というのもなんなので、他にもいくつかやって来ました。
 

ポータル「盲導犬サーブの像」
 

サーブ像の周囲を歩くミッションをこなすと、このメダルが貰える。
 

名古屋遠征の結果。
サーブ以外のミッションは、現地に詳しいエージェントからおすすめを教えてもらってこなしました。
ななちゃん人形でかい・・・。
 
心残りなのは、サーブ像の状態が悪かったこと。
お金出してもいいので、メンテナンスしてもらえないものか。
というか、メンテナンスしていいんだろうか。
名古屋市役所と中部盲導犬協会に打診しようか思案中。。。
 
徒然狸 ―タヌキの日記―

筆者は盲導犬尊敬し、個人的に応援しています。
http://www.moudouken.net/





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