徒然狸 -タヌキの日記-

明けぬ夜の燈明

彼の答

ずいぶん前ですが、下記物体が目の前にあったら目視できるのか、という問題提起をし、光物理のお勉強をしていました
 

 
で、おそらくこうだろうという結論に行き当たったため、ご報告をば。
結論:この物体に光を当てると、身の回りの物体と同様、鋭い散乱光を返してくる。しかしその散乱光強度は非常に微弱で、目視は不可能である。
……この物体は極端にアスペクト比が高く非現実的なので、もう少し現実的な粒子から考えてみる。
 
【例1】
まず、一辺が光の波長に対して十分に大きい場合。
たとえば100um(ミクロン)の立方体の粒子。
細かい塩の結晶でも思い浮かべていただければよいでしょう。
この粒子に光を照射すると、結晶表面や内部で光の散乱が起こり、入射方向とその180度逆方向に鋭い散乱光が放射される。
……このとき、光は十分な強度で跳ね返ってくるので、この粒子は「ギリギリ目に見える」ということにしておく。
 
【例2】
つぎに、一辺が1nmの立方体の場合。
このサイズは光の波長より小さいため、幾何光学の常識は通用せず、先ほどとは異なる現象が起こる。
まず、単位面積当たりの散乱光の強度は例1の時の1垓(10^20)分の1という非常に小さな値となる。
しかも散乱光は一定方向に鋭く放射されるわけではなく、全方位にぼんやりあらわれる。
以上から、最早1nmの立方体は目視不能である。
 
【本題】
ではこれを二次元方向に拡張し、命題の1m×0.5m×1nmにしたらどうなるだろうか。
これは参考書上では想定されていないトンデモ物体なので、何が起こるかを類推する。
まず散乱光の放射方向だが、例1のように、入射方向とその逆方向に鋭く現れる。
これはたぶん間違いない。
問題の反射強度だが、やや乱暴な計算をしてしまえば、単位面積当たりの散乱光強度は例1の100万分の1程度になるハズである。
つまり、ふつうの食塩の100万分の1しか光を反射しないわけで、目視は不可能といってよいだろう。
 
シングルナノメートルの世界では、「光子が原子に近接したとき、相互作用を起こす確率はいかほどか」という考え方が必要になります。
厚さ1nmの物体に光が照射された時。
厚さ1nmの中には原子は何個あるのか。
その一つ一つに光子が相互作用する可能性がいくらだから、この物体が光を跳ね返す確率はいくらだ。
そういうレベルの世界なんですな。
つまり「見えないとは言い切れないけど、非常に見えにくい」のが、ナノスケールの物体なのでした。
 
 
徒然狸 ―タヌキの日記―
 
 

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