徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

電子顕微鏡にて下官に細胞観察の指導をしていたところ、突如電顕が故障。
画面が写らなくなる。
電流計がゼロになっていたため、どうやらフィラメントが切れたようでした。
うちの研究室にある電顕は古い型で、熱電子放出型というタイプの電子銃を搭載しています。
この電子銃から放出された電子をビーム状にしてサンプルに照射することで、サンプル表面を観察するわけです。
でまあ、電子銃とはいっても構造は単純。
要は電球のフィラメントのようなものに電気を流して加熱し、電子を放出させているだけです。
つまり、電球の球切れですね。
仕方ないので交換にかかります。
本体の真空を解除し、電子銃を取り出して分解してやります。

こんなんです。
三つ並んだ真ん中が、電子銃の中身。
中に覗いている白い物体がフィラメントパーツです。
同じものが右上にも転がっています。
手前にある銀色の三角を被せて電気を流すと、頂点の小さい穴から電子が飛び出すわけです。
奥の銀色ドーナツは、電子銃を電顕本体に固定するためのナットのようなものです。
茶色の輪っかはワッシャーです。
で、適当にフィラメントを交換したら、軸調整というのをやります。
フィラメントの中心と穴の中心がぴったり合っていないと電子がうまく飛び出さないので、四方からネジで調整してやります。
出来たら、電子銃を電顕本体に装着し、蓋を閉めてから中を真空にします。
このままではうまく動作しないので、さらに調整していきます。
やることは電流の調整と、軸調整その2。
電流の調整はそのまま、フィラメントに流す電流量の調整です。
電子が最も効率よく放出される電流量を探ります。
次に軸調整。
今度は、電子銃から出た電子がきちんと試料に当たるように、電子銃自体の位置を調整します。
……が、ここでトラブル発生。
どんだけ調整しても、画面が鮮明にならない。
仕方ないので助教に相談。
……30秒で直してくれました。
すげえ……。
どうやら前回整備した誰かが軸を思いきりずらしていたらしく。
困ったもんです。
でまあ、文章にすると一瞬ですが、なんやかんやで半日潰れました。
超シテオク……。
 
最後まで読んでもらえることなんて期待していない
徒然狸 ―タヌキの日記―





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