徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

元素分析と春眠

ちょっと元素分析をやろうと思いまして。
……元素分析とは、サンプル中にある種類の原子(普通は金属原子)がどれくらい含まれているかを割り出す分析をいいます。
炎色反応ってありますよね。
非常に雑に言ってしまえば、炎色反応がどれくらいの強さで起こっているかを調べることで、炎の中に金属元素がどれくらい存在しているかがわかります。
……まあ、そんなイメージのものです。
で、フレームレス原子吸光計がK小隊にあることが判明したので、N中佐に頼んで使わせてもらうことにしました。
ただ、別に中佐も詳しいわけではないらしく、二人で探りながらやりましょう、というくらいのノリです。
で、明日とりあえずお試し実験をするので、「1ppbの標準溶液を用意しておいてほしい」とのメールがくる。
……つまり、私の濃度不明のサンプルの濃度を割り出すために、基準として、「1ppb」とあらかじめ濃度が分かっている溶液を作っておいてくれ、ということです。
お安い御用と思ったが、一応図書館で元素分析について勉強してから調製することに。
そして。
……元素分析は、そんなお手軽に出来るものではないことが判明。
まだ、「ppm」クラスのサンプルならいいんです。
ppmって、時々聞きますよね。
汚染物質の濃度が基準値何ppmを上回っている、とか。
ppmとは、「parts per million」の略で、早い話が百万分の一のこと。
例えば水?リットルの重さは?キロですが、その百万分の一は?ミリグラムです。
つまり、水?リットルに?ミリグラムの汚染物質が入っていれば、その濃度は?ppmなんですね。
で、今回の指定濃度は?ppb
これはppmの千分の一の濃度「parts per billion」を意味します。
じゃあ、まず?ppmの溶液を作って、それを千倍に薄めればいいんだね。
違う!
違うのである。
いや、理屈の上ではそれでいいんですがね。
実際やるとなると、大変らしいのである。
このppbという世界は、ものすごく希薄な世界なのです。
そのため、通常問題にならないような器具の汚れが重大な影響を及ぼすのです。
例えば、ナトリウムという金属原子。
食塩の構成元素ですね。
このナトリウムは、実は身の回りのどこにでもあります。
例えば、綺麗に洗ったコップ。
舐めてもしょっぱかったりしませんよね。
しかし、そこにはナトリウム原子をはじめ、ありとあらゆる原子が汚れとしてこびりついています。
普通の洗い方では、どれだけ洗っても永久に落ちません。
そもそも水道の水が、金属イオン(ミネラル)をどっさり含んでいるからです。
しかし、この汚れを落とさないと、その容器は汚なすぎてppbオーダーの元素分析には使えないのです。
どうするかというと、まず普通に水洗いします。
それを、超純水という極めて純度の高い水ですすぎます。
次に、アルカリの溶液に一晩漬けます。
さらに、酸の溶液につけて一晩から数日煮ます。
それを超純水ですすぎ、乾燥させます。
……器具を洗うだけで数日かかります。
さらに標準溶液の調製は、超希薄溶液の作成技術を身につけた人間がクリーンルームで行うのが好ましいようです。
あー。
無理だね。
ムリ。
とりあえず明日やってみて、やばそうなら早めに諦めます。
 
= = =
 
しかし今週は眠たい。
春眠てやつかね。
研究室で寝そうです。
やばいやばい。
 
= = =
 
タヌキに聞いてみようのコーナー。
今日の日記、ここまでたどり着く人がいますかね。
「いつものことだろ」
それでは、また。





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