徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

タンパク質と謎の現象

今日一日、N少佐のヘルプ実験をしていたのですが。
最後の最後で信じられない現象が起こりました。
タンパク質定量の実験なんですが、これは要は、サンプル溶液の色が濃いほど、溶液中のタンパク質の量が多いことになります。
で、少佐のサンプルの色の濃さを計っていたら、私がいつも出してる値の倍近くの数値が出ました。
言われてみれば、溶液の色が濃い気がします。
……これは少佐にとって大事なデータです。
しかも今回はすべて私の官制下でやっているので、なにか問題が起こればそれは私の責任。
もうパニックです。
一番最初に入れたタンパク質の濃度を間違えたか、分析試薬の濃度を指示し間違えたか、多分そのあたりと思われましたが、いすれにせよ取り返しはつきません。
意気消沈。
ただまあ、私も同じ実験を同時進行で仕掛けていたので、そちらも一応、色の濃さを計ってみると。
……いつもの値に。
この時点で、ある可能性が浮上しました。
実は、私と少佐は、違う種類の測定器具を使っていました。
セルという透明な細長い容器で、その中にサンプルの溶液を入れ、機械で色の濃さを計るのです。
このセル、私のいつも使っているタイプは残り少なかったので、少佐には彼がいつも使っているのをもってきて使ってもらっていたんです。
違うセルでは、もちろんセル自体の透明度なんかも違うため、測定値に影響が出る可能性はあります。
しかし、そういった差を打ち消すために、あらかじめセル自体の透明度を計ってあり、それをサンプルの測定値から引いてあるはずなのです。
しかしまあ、一応、私のサンプル溶液を少佐のセルに入れてみました。
……心なし、溶液の色が濃くなった気がしました。
測定してみました。
値が倍近くに跳ね上がりました。
じゃあ、セルの透明度が違う(少佐のセルには若干色がついている)んだと思い、二種類のセルに水を入れて測定してみました。
むしろ、少佐のセルのほうが透明度が高いことがわかりました。
……完全に意味がわかりません。
つまり、透明度がほぼ同じで、大きさも同じ二つのグラスがあって、同じジュースをいれると、片方のグラスのなかのジュースの色が濃く見えるのです。
世間ではこれを手品と言います。
 
少将に聞いてみたところ、わからんけど、セルとサンプル溶液が分子レベルで相互作用しているとか、そんな理由じゃないのかとのこと。
そんなこともあるのか……。
いやはや、久しぶりに、本気で理解不能な現象に出会いました。
とにかく実験自体は問題なかったので安心しましたが、現象が不可解で気持ちが悪いので、暇を見てネットで聞いてみます。
寿命が縮みました。





 NHK(日本放置協会)は放置される側の団体です。