徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

機能障害

しかしまあ、喘息が発動するのは五年ぶりです。
前回は悲惨でした。
忘れもしない、高校最後の定期試験数日前。
成績がお世辞にもよくなかった私は、この最後の試験に失敗すると大学進学の推薦権が失われるという、危機的状況でした。
とくに数3は中間で失敗しており、期末を外すとすべてが終わりです。
もう、なりふり構わず猛勉強の日々。
そして試験数日前。
…咳が出始める。
無理が祟って風邪を引いたのか…と思ったのですが。
どうも様子がおかしい。
…これは…喘息!?
ほとんど忘れていた記憶が蘇ります。
幼少の頃、私は頻繁に喘息発作を起こしており、深夜によく、母親に連れられて救急センターに行っていました。
乾布摩擦や水かぶり、灸までやっていました。
…しかしそれは、昔のこと。
いまさら喘息発作が…。
しかもこの時期に…。
有り得ない…。
しかし、疑いようはありません。
それでも、試験の日までには回復するはず…。
 
そして、試験前日夜。
呼吸困難に陥る。
もう死ぬんじゃないかと思うレベルでした。
脳の中の、普段は眠っている部位が、『ヤバイ』と信号を出しているのがよく分かります。
病院にいかなければ…まずいかもしれない…。
…でも。
明日は大事な試験。
落とせば終わり。
今から病院にいけば、帰ってくるのは深夜。
そんな時間も体力も浪費する余裕はありません。
そして俺は。
過呼吸でしびれ始める手を必死で動かし。
…パソコンを起動。
…ネットに接続。
googleを開き。
『喘息 発作 応急処置』
検索。
どうやら、生理食塩水を温熱吸引すると良いらしいことが分かりました。
今度は、生理食塩水の蘇生を検索…発見。
食塩のほかにも各種イオンを含むことが分かりましたが、うちには食塩くらいしかないので食塩のみで作ることに決定。
そしてエクセルを起動。
水の量に対して必要な食塩の重量を割り出します。
計算結果を元に簡易生食を作成。
鍋に入れ、コンロにかけ、吸引。
…しながらも、片目では問題集を睨んでいました。
過呼吸で朦朧として、もはや訳が分からなくなっていました。
 
しばらくすると、大分よくなってきました。
多少苦しいですが、もう死ぬことはない感じです。
ほっと一安心。
 
そして翌日。
私は、試験時間まで友人と図書室で勉強していました。
息はやはり苦しいですが、試験には支障はない様子。
さあ勉強勉強…と。
 
発作再発。
 
あっという間に呼吸困難。
「ごめ…保健室いくわ」
それだけ言い残して足を引きずり保健室へ。
非常用にと携帯していた3倍希釈のスポーツドリンクをがぶ飲みしつつ問題集を見ていると、保険の先生に「いいから休んでなさい」とたしなめなれ、過呼吸でしびれていた手をマッサージしてもらう。
そしてなんとか落ち着き、試験場へ。
監督の先生に事情を話して試験中に飲み物を飲むことを許可してもらい。
突破。
今の私があるわけです。
 
…あー、昔語りをしてもうた。
「男は惚れたおなごに昔語りをするものにございます」
誰に語ってるんだ俺は…。





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