徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

イギリス・ドイツ出張記 その5

ミュンヘンの朝。
朝食バイキングがオープンする時間とホテルを出る時間が近かったので、朝食は抜き。
飯食ってて理事を待たせることになってはまずいし、なにより時差ボケの国際会議。
眠くなるのをかなり警戒していたので朝飯抜きのほうがよいだろうと判断しました。
会場はホテルの会議室らしく。
そういえば以前行った環太平洋国際化学会議も、ホノルルにあるヒルトンの大会議場で華やかにオープニングセレモニーが行われました。
まあ今回は通常の学会とは違い、かなりジャンルが狭いのでそんな大々的なものではないはずですが、まあ、いつもの学会だろうなと思っていました。
 
ホテルを出て、ユーロ圏によくある石畳の道を歩く。
なにしろ北海道よりよほど緯度が高いのでかなりの寒さを警戒していたのですが、実は今年の冬はユーロ圏は暖冬気味らしく。
寒いというか涼しい感じで、新調したダウンも邪魔になることのほうが多い。
実に快適な20分程度の散歩ののち、会場のホテルに到着。
ほう。
小ぶりですが格式高い感じのホテルです。
案内板に従い学会の会場に入る。
 
瞬間、理解した。
これはやばいやつだと。

 
常識的な学会の会場とは、最低でも100人は収容できる講義室みたいな部屋。
演台があることもありますが、通常はまあ普通に教師が授業する感じで、講演者がスクリーンの前に立ち、プレゼンテーションを行います。
聞き手は質問の時間以外は黙って着席し、説明を聞き、メモを取るわけです。
 

 
何故わたしはパーティー会場に通されたのでしょうか。
 
想像してください。
学校で授業を受けるつもりで、チーッス! って会場に入ったらそこが披露宴会場だった時の驚きを。
絶望・・・!
圧倒的絶望・・・!
 
それでも一日目はまだよかったのです。
各テーブルに6人ずつくらい座り何が始まるかと思いましたが、通常の学会のように講演者が講演を行い、質問タイム。
これが繰り返される。
もちろん発表は英語。
ただ、ふつうの学会では受付で要旨集なんかが配られるのでそれを見ながら聞けばいいのですが、今回のセミナーではそんなものは一切なく。
流れるパワポ
立て板に水の英語。
日本に帰ったら、このセミナーの内容を報告書にまとめなければいけない。
時差ボケで眠くなるとかそういう次元ではありません。
とにかく単語単語でもいいから聞き取って、何を説明しているのかを理解し、自分なりにまとめ記憶しなければなりません。
圧倒的絶望。
 
が。
どうもおかしい。
確かに話の内容は我々の業界の人にしかわからんような専門的なことなのですが、どう考えても一般論しか言っていない。
この技術はここがキモでこういう特性があって・・・。
いやそれは知ってるんだけど、てなもん。
同じテーブルには他社の日本人技術者がいらっしゃったのですが、効いてみるとやはり「特別なことは何も言ってないですよね・・・」。
同行の理事は英語がかなり聞き取れる人なのですが、「いや、大したこと喋ってないよ(笑)」。
どうやら、最先端の専門家同士が意見を戦わせるような、通常の学会とは毛色が違うようです。
 
それはそれで困る。
 
何しろ、帰ったら報告書を書くのです。
「目新しい話は何もありませんでした」
 
圧倒的絶望!
徒然狸 ―タヌキの日記―
 

筆者は盲導犬を尊敬し、個人的に応援しています。
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