徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

俳句と世界

盛夏を越すと夜蝉が疎らになっていき、相対的に秋虫の鳴き声が増してくる。
彼等が秋虫と呼ばれる所以はそこにあるのかも知れない。
そんな俳句を作ってみました。
そういえば前回のおーいお茶新俳句大賞はもう結果が出ているはずで、そろそろ次回の応募受け付けが始まっている頃です。
一人六句まで応募出来ますが、今出来ているのは四句のみ。
しかも夏しばり。
いつもなら沢山あるうちから選んで応募するんですが、今回は出来たものを全部出すしかないですな。
あと二句はどうしようか。
作ろうとして作ったことはあまりないのですが、やってみますかね。
だれかお題(1単語)をください。
 
俳句といえば、小三治師匠の枕話集の第二集を読んでいますが、そのなかに句会の話があります。
小三治師匠が蛍を見て、詠んだ句がでてきます。
闇のなかに蛍が舞っている、というのが当たり前の発想ですが、小三治師匠は別の連想をしまして。
真っ暗な闇は実はカーテンで、その向こうには明るい世界が広がっている。
蛍が飛んでいってカーテンをスッと引っかくように揺らすと、向こう側の明るい光が漏れ出してくる。
それが蛍の光なんだ、という、舌を巻くイマジネーションです。
で、その世界を書き起こした句が
 
柔らかく 闇を切り行く 蛍かな
 
しかし小三治師匠はどうもいまひとつしっくりこず、知り合いの俳諧に添削してもらったんですな。
そして戻って来た句は一文字だけ変えられていまして
 
柔らかき 闇を切り行く 蛍かな
 
……何百倍もいい句になったけれど、よく見たら句の意味が全く変わっていたという。
 
= = =
 
そういえば昔の日記で、私の望む世界、補完世界について言及しました。
つまり、こんなことです。
 

    • -

 
草原がな、広がってるんだ
 
樹とかは一切ない
空は、雲ひとつない青空なんだ
そして遠くに海が見えている
 
海に近づくと、草原は低い台地になっていたことが分かる
草原と海の間には、真っ白な砂浜がどこまでも続いている
そしてその世界には
鳥も、虫も、魚も、貝も、
一切の動物が存在しない
聞こえる音は潮騒
時折風が揺らす草の音だけ
そんな世界に一人佇んでいる
太陽の動きだけが時の経過を教えてくれるんだ
そこでは空腹になることも風邪をひくこともなく
常に一定
定常状態
 
そして、全てを忘れて
考えると云う行為すら忘れて
何時間も、何日も、何年も、過ごして
 
あるとき、海の向こうから白い鳥が一羽飛んできて
少し離れたところに降りてきて
こちらを見て、少し首をかしげて
また海の向こうに飛んでいったんだ
それは、ここが本当の世界とは違う、
隔離された世界であることを思い出させてくれて
また、現実世界に戻ろうと、小さく決意するんだ
 
一陣の風が巻き起こって
それがきっかけのような気がして
ふっと目を瞑る
 
そして
風がやんで
目を開いたら、またこの世界にいた





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