徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

☆☆僕といろんなクリスマス☆☆

夜。
聖夜。
黒き幸ホーリーナイト。
研究室のプリンタにインク漏れ発生。
機体の右前の下がインクでドロドロである。
誰かがインクをぶちまけたのかと思いましたが、どうもそうではないらしく。
プリンタの中から漏れて来ているらしい。
 
第一話 漏れるクリスマス
 
インクジェットプリンタなので、プリントヘッドがぶっこわれたのかと思ったが、そうじゃないらしい。
印刷は普通にできる。
じゃあ一体どこから漏れてるんだ。
……ふと思い当たったことがあり、ネットで調べてみると、やはり。
インクジェットプリンタって、プリントヘッドのクリーニングとかするじゃないですか。
その時にインクを消耗するんですが、排出されたインクは一体どこにいくのか?
……プリンタのなかに貯まっていくのである。
で、これが一杯になってしまうのが、プリンタの一種の寿命らしい。
もちろんメーカーに送ればクリーニングしてくれるが、まあ買い替えても変わらないくらいの料金を取られることでしょう。
しかしネットで情報を発見。
どうやらプリンタを分解すれば、自分でクリーニングすることも可能らしいのである。
折しも夜の研究室、実験をする気もない。
ので、分解してみることにしました。
ネットを見ながらサイドのカバーを外し、ついで上部カバーをバカッとはずしてやる。
おお。
機械の体だ。
次に電源ユニットを外し、ネジを何本か外して機械部分と下部カバーを分離する。
そして下部カバーの中に、廃インク溜めがありました。
廃インクはタンクみたいなところに入っているのかと思っていましたが、フェルトのような分厚い素材に染み込む形になっていました。
そしてそいつは真っ黒。
満タンのようです。
インク自体は水性のはずなので、フェルトを外し、流しの中で水をかけてみる。
ふむ。
落ちていきます。
しかし、流しが大変なことに。
墨汁を原液でぶちまけたみたいになっています。
しかもそれが止まりません。
フェルトに水をかければ、かけた水と同じ量の墨汁が出てきます。
エンドレスです。
 
第二話 黒いクリスマス
 
これはさすがに流しに流すのはまずいので、バケツの中で洗って、水は色素廃液としてポリタンクに廃棄することにしました。
で。
フェルトはいくつかのパーツに分かれているのですが、全部合わせると豆腐三丁くらいの体積になります。
そこから、36リットルの墨汁ができました。
ポリタンク丸々二本です。
ものすげえ光景です。
それでもまだ終わりではなく、特に汚れのひどいいくつかのパーツはまだ、水を垂らすと墨汁を出します。
しかしもう一時間以上洗浄しているし、これ以上廃液を増やしても仕方ないので中断。
汚れのひどいパーツはバケツの水に一晩漬けることにし、だいたい洗浄が完了したパーツは乾燥器に入れておくことにしました。
乾燥器は理化学用のもので、中があったかい冷蔵庫のような感じです。
普通は実験器具を乾燥させるのに使いますが、うちは暖かい条件で化学反応を起こしたいときにも使用します。
洗い終わったフェルトを片手にドアを開けると、そこではプレデターが自爆していました。
 
第三話 飛び散るクリスマス
 
プレデターって知ってますか。
映画に出て来る人型の怪物で、宇宙からやって来た戦士です。
全身にいろんな武器を装備していて、エイリアンと戦ったりします。
そして怪我をすると、蛍光イエローの血を流します。
さて、乾燥器のなかで、プレデターが自爆したような痕跡があります。
蛍光イエローの液体が、零れたとかぶちまけたとかではありません。
綺麗に飛び散っています。
そばにいた助教が、「とんだクリスマスプレゼントだ」。
まったくです。
どうやら、誰かがプラスチックの容器に蛍光色の試薬を入れ、密栓して乾燥器に入れたようです。
試薬は水溶液なので当然、温めれば蒸発して容器の内圧が上がります。
そして蓋が吹き飛び、飛び散った模様。
しかもよく見ると、飛び散った残りは下に滴り落ちて、乾燥器の本体内に流れ込んでいます。
そういえば乾燥器は停止しています。
スイッチはオンになっていますが、通電していません。
異常停止です。
スイッチを入れ直してもリセットボタンを押しても復旧しません。
……。
 
第四話 壊れるクリスマス
 
徒然狸 ―タヌキの日記―





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