徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

頑張りすぎのMTTとコンタミの夢

フィーちゃん(細胞)での実験で、思わぬ問題が生じる。
基本的にうちでは、実験で培養した細胞の増殖量を定量するために、MTT分析と云う方法をとっています。
これはつまり、細胞内のミトコンドリアの活性(呼吸量)を計測することで、生存している細胞数を割り出す方法です。
具体的には、反応系に黄色い液体試薬を投入してやります。
すると試薬は、ミトコンドリアの作用で紫色の結晶に変化します。
後はこの結晶を溶かす試薬を投入してやり、吸光光度法でで紫成分の濃度を測定してやれば、細胞の数がわかるわけです。(紫が濃いほど生存細胞数が多い)
で、この結晶を溶かす操作ですが、基本的には一時間で終わるはずなのです。
しかし。
一時間では溶け切らないという事態に初めて遭遇。
フィーちゃんが頑張りすぎて結晶が大量に生成してしまったためです。
……この場合、一晩放置するしかありません。
説明書に書いてあるのです。
紫具合を見る限り、待ち望んだ逆転ホームラン的なデータがとれる感じがするのですが、明日にならんと測定いできないことになったわけで。
ああ……明日が待ち遠しい……。
 
= = =
 
細胞の世話をするため、晦日〜三が日あたりもラボに出る予定だったのですが。
意外な制約があることが判明。
基本的に年末年始は入構禁止ですが、こういったやむを得ない事情がある場合、事前に申請すれば入構できるのです。
が。
安全のため少佐以上の人間が二人以上一緒に入構せよとのこと。
ガッデム。
私の小隊では、細胞を扱っているのは私だけです。
なので、他の士官を巻き込めません。
仕方ないので、細胞やクリーンルームの持ち主であるK小隊に応援要請。
仲のよいN少佐に31日の午後、一緒に入ってもらうことにしました。
いやはや、申し訳ない……。
問題は一日から六日までの間。
基本的に四日に一度は培地交換が必要なのですが、六日間空いてしまいます。
一人でいいなら三日くらいに入るつもりでしたが、さすがに正月に応援要請は出来ません。
困った……。
ぶーちゃん(細胞)の方は播種量を極微量にして、培地を二倍入れておけば行けるような気もします。
しかし、フィーちゃんは増殖も代謝も活発なので、どうなるかわかりません。
うーむ。
 
というか、そんな心配をしていた所為で、昨日とうとう夢にみました。
正月はラボ入れず、仕方ないので細胞を家にもって帰って世話をしていたら、見事にコンタミ発生。
普通の培養では、ウイスキーのポケットボトルのような平たく、四角いフラスコを横に寝かせ、中に細胞と、赤い透き通った培地を少量入れます。
それがもう、フラスコ内がぐちゃぐちゃになってました。
どれくらいぐちゃぐちゃかというと、最終的には小さな蛙やオタマジャクシまで入り込み、もはやコンタミというレベルではなく、言わば沼のような、雑炊のような状態に。
夢の中でも、「さすがに蛙はおかしい。どうやって入ったんだ」と悩みました。
近年稀に見る変わったうなされ方でした。
 
ちなみに培地が赤いのは、フェノールレッドというpH指示薬が入っているためです。
この色が黄色くなるとそれは培地が酸性に傾いているということになり、つまり、見るだけで培地の異常に気付けるようになっているわけです。
ところで、エヴァンゲリオンLCL綾波培養培地も赤かったですが、あれももしやフェノールレッド?
 
おまけ情報。
pHについて。
この読み方をペーハーと習った方も多いと思いますが、実は現在の化学界ではピーエイチと読むようになって来ています。
つまり、これまでドイツ語読?だったものを、英語読みに統一していこうと。
ショウノウをカンフルと読んだら、カンファーと読めと言われたこともあります。
ちなみにバイオでもやはりそんな傾向らしく、酵素の語尾「アーゼ」を「エース」と読む動きもある模様。
カスパーゼ→カスペースみたいな。
なんだかピンときません。
以上、卯月さんが辟易するような日記でした。
 
= = =
 
今日の一句のコーナー。
ズバッとお願いします。
「細胞も インフルエンザ うつるのか?」
それでは、また。





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