徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

トラブルと統計学

トラブルが二件。
研究室引越に伴いドクタールームに一時退避中のデスクトップPCが突如唸り始める。
どうやらCPUファンの回転数が上がっているようなのだが、CPUの温度に異常はない。
マザーボードも常温である。
暫く放置するとやがて回転数が5000に到達したのでそろそろヤバイかと思いシャットダウン。
よくみたらヒートシンクに埃が溜まっていたので、研究室からエアダスターを持ち出して一通り清掃。
……治りました。
ついでに、これまでCPUの通常温度が43度くらいだったのが、39度くらいに下がりました。
……一度クラッシュさせて以来あまりパソコンのフタは開けたくなくなっていましたが、たまには掃除せんといかんのね。
 
もう一件は小型電気炉「スーパーバーン」のトラブル。
これも引越の際に別の部屋に移設になっていまして、今日移設後初めて運転してみたんです。
サンプルを入れ、900度24時間焼成するようにプログラム。
そして数時間後、そろそろ900度に達しているだろうと様子を見に行ったら。
全く温まっていない。
なんじゃこりゃ。
プログラムを停止し、フタを開けてみると、発熱体(写真)が折れて脱落しているのを発見。
よく見ると、脱落していないものもいくつか損傷している。
こりゃ、温まらないわけだ。
おそらく移設するとき、少佐らにかなりぞんざいに扱われたのでしょう。
ガサツだからなあの子達……。
エバポレータ(ガラス製装置)を移設するときはこりゃヤバイと思って私が指揮したのですが、生憎スーパーバーンは私の知らぬうちに移設されてまして。
……ちなみに私の大事な蛍光顕微鏡(私物化)は誰にも触らせず、頑張って単独でかなり慎重に移設したのですが、今思えば正解だったようです。
とりあえず、出入りの業者にメールして発熱体の見積もりを以来。
大将によれば一つ3万円くらいとのこと。
とりあえず最低3つは破損しているので、12万以上の出費になります……。
私の金ではないけど、超シテオクです(死語)。
 
ついでに、インキュベータ内を湿度100%に保つための水が干からびているのを発見。
なんか細胞が死んでると思ったら……。
管理者のN少佐は既に帰宅済み。
給水法を知っている人間がいない。
しかたないのでメールでやり方を聞いて適当に補給しておきました。
何なんだ今日は。
 
= = =
 
なんだか統計学の勉強をする必要にせまられており。
……昨今のバイオ研究には統計処理が必須なのである。
例えば、細胞をAB二種類の環境で培養したとき、Aの細胞の方が若干増殖が早いとする。
確かにグラフにしてみると、Aの増殖が早いように見える。
ただ、細胞実験のデータというのはどうしても誤差が大きいので、Aの方がいいと本当に言い切れるのか、という疑問が残る。
Aの方が良く見えるのはたまたまで、実はAもBも大差ないんじゃないの、という可能性である。
そこで、統計学的に二つのデータを検定してやり、有意性を評価してやるのである。
具体的にはt検定というのがバイオではよく使われるらしく、その結果算出される「p値」というものが、よく論文に載っている。
数学的な意味合いとか細かいところは全くわからないが、とりあえず今日理解できたことを書いてみる。
t検定を行う際、まずは帰無仮説というのを立てる。
「何を証明したいのか」を決めるのである。
ここでは、AはBよりも良い結果(Aの細胞数の方が有意に大きい)ことを証明したい。
ただし、Aの方が大きい、という状態は「どれくらい大きいのか」というパラメータを含んでいるので扱いにくい(らしい)。
そこで、「AとBは同じ大きさである」という帰無仮説を立てる。
そしてそれが覆されれば「Aの方が確かに大きい」ことが証明される。
そしてAとBの関係についてt検定を行い、p値を算出する。
ここで、例えばp=0.001となったとする。
これは、同じ実験を繰り返し行った場合「AとBが等しくなる確率」が0.1%であることを意味する。
つまり、「AとBは同じ大きさである」という帰無仮説は棄却され、自動的に「AとBは有意に異なる値である」ことが証明されるのである。
で、今回のケースだと「Aのほうが大きく見える」のが誤差のいたずらではないことがわかるんである。
 
……例によって、半日ほどで読み取れた部分の凝集なので、実は完全に間違っている可能性があります(p>0.30)。
 
参考文献:ハンバーガ統計学(Web)、他





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