徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

不足と用途

I小隊の設備が微妙におかしいことに気付き始める。
まず器具が絶望的に足りない。
ナノ材料合成系だが、基本的には無機合成研究と思ってもらっていい。
なのにビーカーが、100から500までの各種、二三個ずつくらいしかない。
ホットスターラーが三台しかない。
当然、足りないのが日常である。
そして一番の問題は、化学天秤が二台あるのに、普通の天秤がないこと。
……化学天秤とは、化学実験に用いられる超精密電子天秤である。
右図。
最小レンジは0.1mg。
これは器具についた指紋や、空気の対流なんぞに影響されるレベルである。
精密ならそれに越したことはなかろう、と思うかもしれないがそうではない。
化学天秤で粉末の試料を量りとるのは、PSG‐1を持ってテロリストのアジトに突撃するようなもんである。
ナイス例え。
昨日は非常に悩まされた。
サンプルの粉を0.15gずつ、25包ほどに分けなければならない。
本来なら秤量瓶に入れて小分けにするところだが、そんなものはないので薬包紙を使った。
……この薬包紙の重さが安定しない。
天秤に載せると、いつまでも軽くなり続けるのである。
風袋ボタンを押して表示をゼロにしても、あれよあれよという間に重さがマイナスになっていく。
薬包紙が湿っていて、水分が抜ける過程で軽くなっているのかと思ったが、それにしてはオーダーが大きすぎる。
謎であった……が、今日、原因に思い至った。
静電気だ。
薬包紙が帯電していたのである。
そして、静電誘導により天秤の底と引き合っていた。
しかし、静電気は徐々にリークしていくため、薬包紙と天秤が引き合う力が徐々に弱くなり、天秤の表示がどんどん小さくなっていたのだ。
……こんな感じである。
 
何と不便な機械だ、という感じたが、別に天秤が悪いわけではない。
使い方が完全に間違っているのだ。
まず、薬包紙を使うのが望ましくない。
前述のとおり、紙と言うものは水分を吸うので重さが変わる。
そのうえ表面積が大きいので空気の流れに影響を受けやすく、しかも重心が分かりにくい。
普通、化学天秤で資料の重さを量るときは、何らかのガラス容器を使用するべきである。
また、化学天秤を使って試料を量り取ろうとするのがそもそもおかしい。
普通の電子天秤は
ASIN:B0010WMHS0
こんなであるが、化学天秤ではこの電子天秤の上にガラスケースがついていて、外界から隔離できるようになっている。
右上図。
これは、「試料を量り取る」ための物ではなく、「既に取り分けた試料の重さを決定する」ための物である。
これで試料を量り取ろうとすると、かなりシビアな薬さじワークが求められる・・・というか、長時間やってると必ずこぼす。
・・・ああ、普通の電子天秤がほしい・・・。





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