徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

中学校の思い出

学校時代は、いまだ色褪せぬ大切な思い出です。
当時私は天文部に所属しておりました。
放課後は、別棟二階の隅にある理科室に集まり、友人たちと大騒ぎしたり、無駄話をしたり、
顧問のU先生に教わって太陽黒点の観測をしたりと、私の思い出の大部分がそれらの光景で溢れております。
また、年に一度、夏休みにいく合宿も、大変楽しいものでありました。
十数人の部員と顧問のU先生、副顧問のS先生で観光バスに乗り、星空のきれいな田舎町へ、三泊ほどの旅に出かけます。
泊まる先は、小さいながら温かみのあるペンション。
出される料理の大半がフランス料理なのには少々閉口いたしましたが、今はそれも懐かしい限りであります。
合宿の目的は夜間の流星観測ですので、昼間は決まってみんなで散策に出かけます。
水のたいそう美しい川辺で遊んだこと、高原の景色を見渡しながら林檎をかじったこと、高原を歩き回っていたら土砂降りの雨に降られたことまで、
思えば何もかもが宝物のような日々でありました。
そして夜は流星観測。
ペンションの脇にある草むらや空き地などに大きなシートを敷き、みんなで寝袋を並べて横になります。
そして、東京では決して見られぬあの広大な宇宙を見下ろし、流星を待つのです。
合宿は、しし座流星群など流星群の見られる時期に合わせて行われますので、少なくとも数分に一度、
多いときには一分間に十数個もの見紛うことのない流星が、夜空ではぜて、消えていきます。
本当に、忘れがたい光景でありました。
また、合宿とは別に、年に数回、観測会が開かれます。
学校に泊まり込み、天体望遠鏡をいくつも持ち出して、いろいろな星を観測するという、子供心には堪らないイベントです。
本校独特のずんぐりした通学鞄と共に肩に感じる寝袋の重さすら、大変心地よく感じたものです。
授業が終わり、理科室に集まりますと、決まってU先生が皆をプラネタリウムに連れて行って下さいました。
そして学校に戻ってからは、辺りが暗くなるまで天文に関するビデオを観ます。
出前で届けてもらう弁当を皆で食し、外に出て観測など行いました。
また、肝試しなどもやりました。
まず先輩方が校舎内に隠れ、後輩たちはU先生の用意してくださった怖いビデオを観ながら待ちます。
そしてひとりずつ後者に入って行き、何箇所かに隠してある紙切れを拾って戻ってくるのであります。
これがまた、たいそう怖かったことを記憶しております。
本校校舎の廊下の両端にはそれぞれ、向き合うかたちで二枚の大きな鏡が設置されておりまして、
どちら向きに歩いても自分の歩く姿が鏡に映って見えてしまうのです。
暗闇でろうそく一本の光を頼りに鏡で自分の顔を覗くのは勇気が居るといわれますように、
暗闇にある鏡と申しますものはもうそれだけで恐怖の対象になりました。
何とか紙切れを見つけ、明るい理科室に戻ってきたときの安堵感といったら、言葉に言い表せぬほどのものがありました。
肝試しのあとはスポーツ大会。
体育館にて、皆でサッカーや野球などをします。
私は当時よりスポーツというものが大層苦手でありましたが、気心の知れた仲間とのゲームは、とても楽しいものでした。
さて、皆くたくたになったところで、体育館の中に寝袋を敷き、寝ることとなります。
夜中、先生に黙って皆でこっそり学校を抜け出したりしたのも良い思い出です。
朝食は、カップラーメン。
ガスバーナーで沸かしたお湯で作ったカップラーメンは、大層美味でありました。
 
・・・昔お袋に買ってもらった風鈴の短冊がぼろぼろになっていたので、新しいものに付け替えて、ふっと夜空を見上げたら、
そんなことを思い出しました。





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