AIに嵌められた件について
2000年代前半、ぼくが学部にいたころ。
検索エンジンなんてまだほとんど機械検索でした。
つまり、検索ワードが含まれるWebサイトがただひたすら羅列される、というイメージのものでした。
今は全然違います。
自然語検索に対応したうえ、人間の検索パターンをAIが学習していますから、こちらの探したい情報が、ほとんどてめえ俺の心読んでるだろう的なレベルで出力されます。
で。
諸事情により、実験屋さんのおいらもたまには在宅勤務になります。
やることはまあ、技術情報収集とか、実験データのまとめとか、報告書の作成とか。
ちなみに現在、OJTメンターをやっており、修士卒の女性と一緒に仕事をしています。
ということは、在宅勤務時にはちゃんと仕事を振ってやらないといけない。
こっちだってともすれば暇になっちまうので困りますが、まあいい機会だと思って報告書を書かせる。
・・・実験自体は二人でやって、いつもはおいらが報告書を書いているのですが、じゃあ今回はおまえがやってみ、と。
ふつう、新人なんて日本語もまともに書けないケースも多く、データまとめもひっちゃかめっちゃかですが、彼女はさすが化学者。
平均値を大きく上回るパフォーマンスを示します。
それでもやっぱり、ビジネス文語は慣れもあって、最初はきちんと書くのは困難です。
で、書いてもらったレポートをまずは一人でチェック。
次いでスカイプで画面共有しつつ、ここは話し言葉になってるから、こう書かなきゃだめだよ。
ここは目的語が不明確だからきちんと書いて。
とか音声通話しながら、赤を入れていく。
そのうちに、ちょっとした単語に引っかかる。
数値が「増大した」という表現があって、ぼくは「向上した」のほうがいいのでは?と思った。
・・・この辺、ぼくの結構あいまいな感覚的なところで。
国語の勉強は大嫌いだったので単語や文法の知識は皆無なのですが。
幼少より小説を読みまくったせいで、単語や文法が文章の流れに沿っているかどうか、みたいなところにけっこう敏感に反応するのです。
で、「増大」という言葉の定義を調べるため、画面共有したまま、グーグルさんで、「増大」と検索する。
画面に表示される検索結果。
おいらと新人女性、ネット越しにおなじ検索結果を目の当たりにする。
0.2秒経過。
おいらの脳細胞が「あ、やっちまった」と察知。
言語中枢と運動神経に同時に指令が送られる。
つぎの0.5秒で肉体が反応する。
手の指が「増大」の後に「 類義語」と入力してエンターを押しつつ。
口と舌が「ごめんねーとんでもねえもの表示して☆」と、おどけた風を装う。
「あははー」と乾いた声がインカムから聞こえてくる。
「ほんとごめん、なんだよこれ☆」とふざけっぽく言いつつ、「ちなみにこの単語の定義は」と有無を言わさず業務モードに移行。
何事もなかったかのように振る舞う、二人。
おいらに何が起こったのかは、「増大」とグーグル検索してもらえれば分かります。
この時ばかりは焦りました。
そしてAI技術を呪いました。
まあたぶん、日ごろそれなりには仲良くしてるので、訴えられはしないと思いますが。
畜生AI。
死んでしまえ。
徒然狸 ―タヌキの日記―
筆者は盲導犬を尊敬し、個人的に応援しています。
中部盲導犬協会:http://www.chubu-moudouken.jp/
日本盲導犬協会:http://www.moudouken.net/