徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

ポンジュースおよびポン酢についてのホラ話

みなさまはポンジュースというのをご存じかと思います。

愛媛県産の柑橘類を使ったジュースですね。

でも、なぜ「ポンジュース」という名前なのかと聞かれると、答えあぐねるのではないかと存じます。

ここにわたくしが、その名前の由来について書き記しておきます。

 

関係ないようで関係のあるお話ですが――。

四国地方には昔から、名高いタヌキが多く存在しています。

阿波狸合戦金長狸合戦)に登場する金長などはその代表格といえます。

ジブリ映画「平成狸合戦ぽんぽこ」でも、多摩丘陵のタヌキたちが人間に戦いを仕掛けるため、四国の有力なタヌキに助力してもらうエピソードが描かれています。

 

さてポンジュース

いまでは「ニッポンが世界に誇るジュース」という語の略称であると人間界では信じられていますが、その実情は少々異なります。

ポンジュースとは本来、タヌキが開発したジュースであり、その証として「ポン」の名を冠したジュースとして名づけられたものでした。

 

現代社会においてタヌキたちが人間社会に溶け込み、ともに働き生活していることはみなさまご存じのことと思いますが。

その一端として愛媛県には、果樹園を経営するタヌキがおります。

もちろん、みかんなど柑橘系の果物が、その主たる生産品です。

そのタヌキは極めて研究熱心であり、よりおいしい実を成らせるため日夜努力を重ねておりました。

そしてある日、様々な品種交配を経て彼は、とても甘みの強い柑橘類の新種を樹立せしめました。

彼はタヌキですが、人間社会ではまさかそれを主張することはできません。

しかし常々、タヌキの名を人間界に轟かせたいと考えておりました。

そこで彼は一計を案じました。

その新しい品種の名称に、せめてタヌキが開発したのだという証拠を残そうとしたのです。

はじめのうちは、「たぬきみかん」など分かりやすい名称を付けようと考えましたがそれではあまりにも露骨すぎます。

或いはその真意に気づいた人間たちから危害を及ぼされないとも限りません。

そこで彼は「たぬき」ではなく、それを抽象化した「ぽん」という言葉を使うことを思いつきました。

タヌキといえば腹鼓、という根も葉もないイメージは完全に理由不明にせよ、いまや人間の認識に深く溶け込んでおります。

そしてその音のイメージを擬音とすれば間違いなく「ぽんぽこぽん」となります。

その「ぽん」の音をタヌキの象徴として拝借しようと考えたわけです。

そして彼はそのおいしい果実に、「ポンポコミカン」、略して「ポンカン」という名前を付けることにしました。

このポンカンはあっというまに人間界に広まり、愛されることになりました。

 

またその後、このタヌキはさらなる品種改良にも成功しています。

皆さんご存じの「デコポン」という果実です。

この果実はポンカンをもとにして生まれたものですが、大きな特徴として果実の頂点がぼこっと凸になっていました。

出っ張っているポンカン、デコポンというわけです。

 

さてずいぶんお話が長くなってしまいました。

ここからいよいよ、ポン酢の名前の由来が明かされます――が、もうみなさま、だいたいの予想はついているかと思います。

 

中部地方のある「酢」のメーカーがあるとき、柑橘類の風味を生かした酢を作れないかと考えました。

柑橘類と言えば、やはり愛媛県です。

メーカーは愛媛県でとれるさまざまな柑橘類を調査し、とくにポンカンやデコポンなど、「ポン」の名を冠す柑橘類が酢に対して非常に相性がいいことを見出しました。

そしてその生産者と話すうちに、メーカーは気づきました。

この生産者は自分と同じ、タヌキなのだと。

そこからはあっという間に話が進みました。

タヌキが作る酢に、タヌキが作る柑橘類を混ぜた、まったく革新的な調味料を世に送り出す。

そしてその名前には、タヌキの象徴である「ポン」をつけようと。

「ポン酢」誕生の瞬間でした。

 

そしてあとはみなさまご存じの通り。

ポン酢や、それに続く「味ぽん」はあっという間に日本中の家庭に受け入れられ、今では日本食の立役者としてなくてはならない存在です。

そしてどうか、忘れないでいただきたい。

この日本の食文化を支える一端には、タヌキたちの働きがあったことを。

 

徒然狸 ―タヌキの日記―

 

筆者は盲導犬尊敬し、個人的に応援しています。
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