本性が化学屋さんなので、「におい」についてはいろいろ触れてきました。
それがどうしたのかというと、本日、協力会社に出張して試作実験を行ってきたときのお話。
試作で、協力メーカーさんが用意したある薬品を使用し、なかなかいい結果が出ました。
これなら量産採用できそうです。
ただし問題として、その薬品は有機溶剤を含んでいました。
ようは、シンナーみたいなあれです。
なにが問題かというと、今検討中の製品はイギリス向けのもの。
日本とは違い、特に欧州圏では有機溶剤は有害物質として、輸出入や取り扱いが厳しく規制されています。
薬品に含まれている有機溶剤が規制にひっかかるものであれば、日本からイギリスへ輸送することすらできない可能性があるわけです。
何の溶剤を使用しているのかメーカーさんに聞いてみましたが、残念ながら調べてみないとわからないとのこと。
そこでおいらが「ちょっとにおいをかがせてください、たぶんわかりますから」とお願い。
するとおいらのいつもの冗談だと思ったらしく、居合わせた技術者が笑いました。
でもこれは冗談ではなく。
たぶん化学屋さんなら理解していただけると思います。
独断と偏見ですが、技術的な仕事空間で感じるにおいの大半は、いくつかの典型的な分子構造・原子構成をもっています。
実際に感じるのは脳が反応した感触のため(言ってみればテレパシーに近い?)、他人が共感できるような言葉にするのは困難です。
でも明らかに、におい物質の分子構造・原子構造によってにおいの特徴が大きく変化します。
おいらの感覚だと、たとえば・・・
・エステル系:濃いと刺激臭だが、薄いと果物のような芳香になる、ちょっと複雑なにおい
・直鎖炭素系・環状炭素系:単純な無機質なにおい
・テルペン系:ヒノキなど樹木のような複雑なにおい、バニラのにおいもこれ
・ベンゼン環系:石油のような、単純なにおい
・窒素原子を含むもの:なにか生物的なオエッとくるにおい、または火薬が燃えたにおい
・硫黄原子を含むもの:特徴的な不快な刺激臭
・塩素または臭素単体:漂白剤のにおい
・アルコール系:すっとする、または刺激的だが単純なにおい
・アンモニア:薄いと眉間辺りにモジャモジャ感じる、濃いと頭の中に風が吹く感覚(危険)
などなど。
で、その薬品のにおいをかいだところ、明らかにベンゼン環系。
そして一般的な溶剤であるというところも考慮すると、かなりの確度でトルエンであろうと推定できました。
ためしにトルエンをよく扱う先輩に確認してもらったところ、「うん、トルエンだね」。
・・・トルエンが欧州圏に輸出できるのかどうかは宿題で調べときますが。
昔取った杵柄というか、やっぱりそれなりに、学校で学んだことは一生役に立つもんです。
徒然狸 ―タヌキの日記―
筆者は盲導犬を尊敬し、個人的に応援しています。
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