徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

ミッション・デイについて

Ingressの世界では公式や有志が企画する様々なイベントが世界中で頻繁にありまして、以前参加した「Aegis Nova Tokyo」はオフィシャル主催のイベントでした。
あれ以来なかなか機会がなくイベントに参加できていなかったのですが、有志が主体となって開催される「ミッション・デイ」というものが近所で行われることになり、行ってきました。
3日、木曜日。
神奈川県大和市大和駅を中心としてミッション・デイ専用の18ミッションが設定され、参加者は昼の間に3ミッション以上をこなすことでイベント参加認定されます。
で、後日「ミッション・デイに参加した」という実績がゲーム上で登録され、参加回数に応じてメダルが授与される、というもの。
 
当初の予定では18ミッション全クリしてやるぜヒャッハーてなもんでしたが、やってみると意外と歩行距離があり手ごわく、結局6ミッション(計12 km)だけやって終了。
残りは後日にちまちまやることにし、エージェント仲間と集まってかなり早い時間帯から酒宴となりました。
 

 
エージェント同士話していると、やはりさまざまなプレイスタイルの方がいます。
地元の防衛に燃えてる方、とにかく敵地を攻撃するのが好きな方、世界中のイベントを巡ってる方、「ゴーラック」というエージェント同士の体力勝負の競技へ参加されてる方、そしてぼくのようにミッションばっかりやってる類。
 
・・・なんでこんなにミッションが好きなのか。
歩く場所なんてほとんどが街なかだし、ちょっと景色がいいところに行けば山道に入ったり海沿いを長距離歩く羽目になったりするし、そもそも景色を楽しむ余裕なんてあまりない。
お金と時間を費やしてただ一人、黙々と歩き、苦労して得られるものといえば画面の中に表示されるメダルだけ。
それなのに何で毎週ミッションに行くんだろうかと。
最近、単独行の山登りに近いものかもしれないと思い始めました。
「何故山に登るのか?」という記者の質問に対し、ジョージ・マロリーが「そこにそれがあるからだ」と返答したことは有名ですが。
実はこれはマロリーの本心ではなく、くだらない質問を適当にあしらっただけのものだという話を聞きました。
そうなのかもしれませんが、ただ、ほかに表現しようがなかったというのもあると思います。
ぼくは山は好きですが登る根性はないので、山岳関係の著作を読み漁ってるのですが。
単独行の山。
青い空、澄んだ大気、荒涼とした地面、作り物としか思えないようなすさまじい絶景で構成される世界。
そこにただひとり歩き、佇んでいる。
何もない、ただひとりだけが生きている世界。
社会という枠組み、人と人との関わり、すなわち日常世界から解放された絶対的な孤独の世界。
何が起こるかというと、自分との対話が生じます。
それは言葉になるようなものではなく。
強いて言葉で表現しようとすれば、夢枕獏の描くような、
「何故登り続けるんだ、そんなに苦しいのに」
「頂上に行けばなにかいいものが落ちていると思ったのか」
「良い女が待っていると思ったのか」
「さぁもういいだろう、降りよう」
「なんだ、まだ歩くのかお前は」
「苦しいだろう、歩くのか」
「そうか、お前は行くんだな」
こんな、精神をハッキングして意識の流れを直接とらえる感覚。
それがミッション中の脳内を支配しているような感じなのです。
単独行登山とは比べるべくもありませんが、やはり苦しい時もある。
ミッションはお遊びですから、自由です。
いつでもやめていい。
でもやりきらなければいけない。
くるしい。
でもつづけるんだ。
そんな意識の平衡の中に、やはり自分自身との対話が生まれ、つまりその瞬間、精神は社会での義務や他者との関わりなんかから解放された状態になり。
要は結果として、ストレス発散になるような気がしています。
自分しかいない、義務も責任も、勝ちも負けもない世界で、ただ目的地に向かって歩き続ける。
これがどうやら、ぼくの精神衛生にはよいようです。
 
徒然狸 ―タヌキの日記―
 

筆者は盲導犬尊敬し、個人的に応援しています。
http://www.moudouken.net/





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