徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

探し求めていた曲について

2005年ごろのこと。
当時はネット上において、音楽データの取り扱いがまことに厳しく制限されていました。
Youtubeの創設がちょうどその2005年であり、つまり一般ユーザがネット上に音楽や動画をアップするという行為は珍しいことでした。
また著作権がらみのトラブルによるMP3.comの御取り潰しも記憶に新しく、著作権のからむ音楽データを無償で手に入れようとするならアングラに踏み込むしかない時代の、末期頃だったのでしょうか。
その代りに、有志のクリエイターが自分のサイトで無償で公開する彼オリジナルの音楽データがそこかしこで見られた時代でもありました。
 
そんな時代にぼくも、そういう無料の音楽データを収集していまして。
とくにKanatani Satoruという人の音楽が好きでした。
彼の楽曲は歌詞やボーカルがないので「歌」ではなく「曲」でした。
その歌詞のない曲をMP3プレーヤに入れて楽しんでいたものです。
中にはその曲に対し、自ら作詞し歌を入れたカバー曲を作製し、配布している方もいました。
つまり、そういう時代でした。
 
Satoruさんの曲で「空ヲ飛ブ風」というのがありました。
これを九字汰さんがカバーした「走馬灯ニ見タ夢」という歌が非常に良かったこともあり、多くの楽曲の中で一番気に入っていました。
そんな中、「走馬灯ニ見タ夢」とは別の歌詞が入った「空ヲ飛ブ風」のサンプルデータ(冒頭部分だけのもの)が手に入りました。
聞き取れた歌詞は「走り続けた 小さな灯台 笑顔の○○に 辿り着けた夏」。
「辿り着けた夏」というフレーズをすごいと思いました。
夏は光にあふれる憧れの季節ですが、誰にでも平等に訪れるものです。
しかしそこに「辿り着けた」ということは即ち、それは特別に美しい素晴らしい夏というものを連想させます。
もちろんこの曲が狂おしいほどに気になったので探しましたが、いかなる情報も見つけ出すことはできませんでした。
 
それから11年。
検索エンジンはほとんど人工知能と変わらない域に達し、漠然とした記憶から目的の情報に正確にたどり着けるまでになりました。
ふと思い出して、「空ヲ飛ブ風」を検索し、それが2005年当時、ある小説のイメージソングになっていたことを知りました。
クリオネの灯り
いじめ問題をテーマにし、子供から大人までを広くターゲットにしたもので、驚くべきことに演劇化も当時されていました。
いわゆるサウンドノベルとは違い、当時はWebサイト上で一般公開されていた作品。
通常の小説作品と異なるのは、美しいCGによる挿絵がその作品の売りの一つだったということ。
つまり、HTMLベースの挿絵入りWeb小説、というイメージだったのでしょうか。
残念ながら当時のデータは既に公開されていないようで、その実態はわかりませんでしたが。
フルカラーの書籍化がなされており。

クリオネの灯り

クリオネの灯り

CD付きで、中身は「クリオネの灯り」本文の朗読音声と、「空ヲ飛ブ風」の楽曲データでした。
探し続けたあの歌が、こんなところに。
本当にあっけなく、たどり着けました。
 
・・・届くのが楽しみです(笑)
 
徒然狸 ―タヌキの日記―
 

筆者は盲導犬尊敬し、個人的に応援しています。
http://www.moudouken.net/





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