妄想と災い

「現実と妄想の違いなんてほとんど無いんだよ」
「どういうこと」
「厳密には、定義の問題なんだ。たとえば君は、犬と猫の違いがわかるかい？」
「違いも何も、全然別の動物じゃないか」
「それなら、ハスキーと柴犬の違いは？」
「……犬種が違う」
「犬種はどう定義されるの？」
「解らないけど、遺伝子とかじゃないの」
「でも、同じハスキーでも二頭を比べると、やっぱり遺伝子に違いがある。つまり、犬種の違いは固体差の延長線上にしかなく、同じ延長線上に犬と猫の違いもある。だから動物の違いを『遺伝子』で定義してしまえば、ハスキーと柴犬の違いなんて犬と猫の違いに比べれば些細なものだし、クジラとミジンコの違いに比べれば犬と猫なんてほとんど同じだ。……つまり『違い』の定義次第で、現実と妄想の違いだってほとんど同じものと言えるんだよ」
「……」
「……」
「いや、そんな訳ないだろ」
「やっぱ駄目か」
「当たり前だアホ」
　
徒然狸 ―タヌキの日記―
　
　
昨日のピンチの件、よく考えまして、やはり既存の予備実験のデータを出すことにしました。
予備実験とはいってもそれなりに力を入れて出したデータなので、こういうところで役立ててもよいでしょう。
この予備実験ですが、実は最初にやったときは測定機器の不調でデータの絶対値がおかしくなったので、急遽もういちど実施したんです。
つまり、現象の再現性は確認できているわけで。
災いも三年経てば役に立つ、というやつですな。
　
徒然狸 ―タヌキの日記―