徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

アジ化ナトリウムと滅菌

ちょっと面白い試薬を購入することにしました。
アジ化ナトリウム。
よく食べ物に混入される毒ですね。
ただまあ誰かに盛ろうというわけではなく、防腐剤として使います。
実はアジ化ナトリウムはバイオでは一般的な防腐剤らしく、割といろんなものに入れられています。
先日買った抗体にも、0.02%ほどの重量比で含まれています。
で、なんで必要になったかといいますと、最近BSA溶液が腐りまくっているからです。
BSAはウシ血清から精製されたアルブミンというタンパク質で、これを生理食塩水に溶かしたものを、蛍光染色時のブロッキング剤として使用するのです。
ブロッキングについてはこのブログ内を「ブロッキング」で検索すれば説明が見つかるはずです)
このBSA溶液、夏までは何ともなかったのですが秋ごろから腐りまくり。
一度は使用直前に気付き、仕方ないのでろ過滅菌(菌が通過できない特殊フィルターでのろ過)してから使いました。
しかし、こう腐られてはかなわんので、防腐剤を入れることを決意した次第です。
BSAも安くないのです。
 
でまあ、毒薬(劇薬よりつおい)なわけで。
一応物性調査。
ラットの経口半数致死量は、46mg/kg。
体重65kgに換算すると3gになります。
……おお、まあまあ強い。
しかもご丁寧に皮膚吸収毒性があります。
手袋をしなくては……。
あとアジ化ナトリウムは、様々な金属と反応して爆発物を形成するとのこと。
鉄とも反応するかは定かではありませんが、まあ薬さじを突っ込んで爆発されてもいやなので、プラスチックの薬さじも一緒に注文しておきました。
ただ、プラスチックのさじって静電気で帯電するんですよね……。
粉末がくっついたり弾き飛ばされたりするのでなかなかスリリングです。
やれやれ。
 
ところで、試薬カタログって面白いですよ。
催涙ガスとかドラッグの誘導体とか、すげえものが普通に掲載されていたりします。
まあもちろん、買うとなると面倒なんでしょうけど……。
 
= = =
 
滅菌の話のついでに、オートクレーブ滅菌について最近学んだことを書き留めておきます。
オートクレーブとは、つまりは滅菌専用の圧力鍋です。
滅菌したいものをオートクレーブ内に入れてスイッチを入れると、高温高圧の蒸気が発生し、滅菌されるわけです。
温度は120〜135度。
気圧は2気圧だったかしら。
で、最近ふと疑問に思って調べたんです。
なぜ蒸気が必要なのか。
空焚きでいいのでは??
意外な理由でした。
空焚きの120度くらいでは死なない菌がいるらしいのです。
……ごく限られた場所(温泉など)に棲息する超好熱菌(最適生存温度が95度とか!)ではなく、もっと普遍的に、その辺にいる菌だそうで。
菌の名前は忘れましたが、そいつらは自分の居る環境が悪化すると、「芽胞」とよばれるシェルタのような、非常に頑丈な細胞構造に変化するらしいのです。
そしてこの芽胞状態の菌は、120度や130度では死なないとのこと。
すごいね。
でも、高圧水蒸気の中で130度に曝されると死んでしまいます。
なんでも、130度とかの高圧水蒸気中では有機物の加水分解反応が促進されるらしく、つまり菌は水蒸気と化学反応を起こして分解されてしまうというわけ。
逆にいうと、一般的な100度の熱湯消毒ではかなり長時間行っても、菌を全滅させるのは難しいそうです。
だから熱湯「消毒」って言われるんですね。
(菌をある程度除去するのが消毒で、滅菌は菌を含む全ての生物を全滅させること。つまり、仮に手を「滅菌」するということは、手も死んでしまうことになるらしい)
 
あと、最強の滅菌は火炎滅菌で、つまり滅菌したいピンセットなんかをガスバーナーの炎に突っ込む方法ですが、これにはコツがあるらしく。
……ちょっとうろ覚えですが、滅菌したい部位を一気に炎の中心まで突っ込まないといけないそうです。
例えば、ピンセットの先に菌の塊がくっついている場合。
ゆっくり炎に近づけると塊が弾けて、周囲に菌が飛び散ってしまうことがあるそうです。
逆に、瞬間的に炎の中心に突っ込めば、飛び散った菌も炎を脱出するまえに燃え尽きてしまうのです。
なるほどねえ。
 
以上、誰も読まない日記でした。
 
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今日の一句のコーナー。
さらっとお願いします。
「小春日や 1700字の 駄目日記」
それではまた。





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