徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

免疫組織化学染色とアポ

免疫染色について学んだ。
 
免疫染色法は「免疫組織化学染色法」の略称であり、「免染」や「抗体染色」とも呼ばれる。
以前の日記にも書いたが、要は生体内の狙ったタンパク質だけを可視化する技術である。
特定のタンパク質に対してのみ反応する試薬を人為的に合成することは大変難しいが、好都合なことに、そのような試薬は生体内に存在する。
抗体である。
抗体は、体内に侵入した細菌等を識別する物質であり、つまり、細菌の表面に特異的にあるタンパク質に特異的に結合する能力が元から備わっているわけである。
免疫染色を行うにはまず、ターゲットのタンパク質にのみ結合する抗体を選定する。
これを一次抗体と呼ぶ。
 
ただ、抗体自体には色はついていないため、次にこの抗体に結合させる、色付きの抗体(標識済み抗体)、即ち二次抗体を選定する。
つまり、染色の完了したタンパク質は、
「タンパク質」―「一次抗体」―「二次抗体」―「色素分子」
となるわけである。
(ただし、この一次抗体自身に色素分子が付けてある場合があり、その場合は二次抗体が必要なく操作も簡便である。こういった一次抗体のみで染色する方法を「直接法」、二次抗体を使用する方法を「間接法」という。何故全部直接法にしないかという疑問が当然沸くが、まだそこまでは理解できていない。ただおそらくは染色の自由度を高めるためであろう)
二次抗体の選定で大事なのは、一次抗体を生産した動物をターゲットにした二次抗体を選定することである。
……つまり、マウスの体内で生産された一次抗体には、マウスに対して結合能力を有する「抗マウス抗体」を選べばよい。
(実際には抗マウス抗体はマウスの抗原にのみ結合するわけではなく、ヒトやなんかにも活性を示すことがある。これを抗体の交差性といい、注意が必要である)
ちなみに「抗マウス抗体」がどんな動物の体内で生産されたのかは、以下の要領で注意しなければならない(かなりあやふや)
 
・観察対象の動物に被らないようにする
例えば、マウスの細胞の中のタンパク質を染色するときに抗マウス抗体を使うと、細胞中が染まってしまう可能性がある
・多重染色(複数種のタンパク質を違う色で染める技術。プリントごっこの多色刷りに大変似ている)を行うとき
例えば二重染色をする際には、一次抗体と二次抗体をそれぞれ二つずつ使用する。それらがごちゃまぜに結合してしまわないように注意しなければならないわけだ
 
さらに、二次抗体がどんな種類(クラス)の一次抗体分子の、どこに結合するかということにも注意して種類を合わせないと、一次抗体と二次抗体が結合しなかったりする。
ちなみにマウスのモノクローナル抗体は多くがIgGというクラスらしい。
モノクローナル抗体:単一種の抗体のみを集めた純粋な抗体。対義語はポリクローナル抗体。モノクローナルは品質が安定しているが、ポリクローナルの方が染色強度が高い)
 
また、色素分子も選んでやらなければならない。
自分が所有している観測装置にあった色素でなければ観察できないし、どんな色で染めるかも重要である。
極端な話、せっかく多重染色しても、同じ色で染めてしまったら完全に無駄骨である。
 
以上が抗体選定の大まかな流れである。
(なにぶん殆ど一日で学んだことなので、あまり参考にしてはいけない)
しかし抗体は無数にあり、ターゲットのタンパク質に結合はするが、染色法Aになら使えるがBには向かない、といったものが普通で、しかもそれは使ってみないと分からない場合が多い。
しかし抗体は、小指の先程の量で数万から十万円という高価な物質である。
トライアンドエラー、というわけには行かない。
バイオ実験は金さえあればなんでも出来る反面、金が無ければ何も出来ないという気色の悪い分野なのであった。
でまあ、通常は経験者に相談するか、自分と同じ染色をしている論文を探し、全く同じ抗体を用意するしかない。
しかし、裏技がある。
Sigmaという有名な試薬会社があり、この会社でも抗体を扱っている。
種類はそれ程多くないが、Sigmaの抗体は「この抗体は染色法AとCに使える」という保証が付いているのである。
そして万が一購入した抗体がうまく働かなかった場合、返金(交換?)が受けられる。
なので、安心して利用できる。
素晴らしいね。
 
ここからは、私が今日自分で選んでみた抗体の話をしようと思っていたが、家についてしまったので割愛。
明日は詳しい人にアポをとってあるので、選んだ抗体を採点してもらいます。
 
= = =
 
タヌキに聞いてみようのコーナー。
今一番欲しいものはなんですか?
「尺八」
(視線を合わせず)それでは、また明日!





 NHK(日本放置協会)は放置される側の団体です。