徒然狸 -タヌキの日記-

――空。美しい空。悲しい空。何かを置き忘れてきてしまったような、空。

草原がな、広がってるんだ

樹とかは一切ない
空は、雲ひとつない青空なんだ
そして遠くに海が見えている

海に近づくと、草原は低い台地になっていたことが分かる
草原と海の間には、真っ白な砂浜がどこまでも続いている
そしてその世界には
鳥も、虫も、魚も、貝も、
一切の動物が存在しない
聞こえる音は潮騒
時折風が揺らす草の音だけ
そんな世界に一人佇んでいる
太陽の動きだけが時の経過を教えてくれるんだ
そこでは空腹になることも風邪をひくこともなく
常に一定
定常状態

そして、全てを忘れて
考えると云う行為すら忘れて
何時間も、何日も、何年も、過ごして

あるとき、海の向こうから白い鳥が一羽飛んできて
少し離れたところに降りてきて
こちらを見て、少し首をかしげて
また海の向こうに飛んでいったんだ
それは、ここが本当の世界とは違う、
隔離された世界であることを思い出させてくれて
また、現実世界に戻ろうと、小さく決意するんだ

一陣の風が巻き起こって
それがきっかけのような気がして
ふっと目を瞑る

そして
風がやんで
目を開いたら、またこの世界にいた





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